A.事業場の解釈としては、昭和47年9月18日発基第91号通達の第2の3「事業場の範囲」で示されています。その中で、労働安全衛生法は、事業場を単位として、その業種・規模等に応じて適用することとしており、事業場の適用範囲は、労動基準法における考え方と同一です。つまり、一つの事業場であるか否かは主として場所的観念(同一の場所か離れた場所かということ)によって決定すべきであり、同一の場所にあるものは原則として一つの事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とされています。例外としては、場所的に分散しているものであっても規模が著しく小さく、組織的な関連や事務能力等を勘案して一つの事業場という程度の独立性が無いものは、直近上位の機構と一括して一つの事業場として取り扱うとされています。また、同一の場所にあっても、著しく労働の態様を異にする部門がある場合には、その部門を主たる部門と切り離して別個の事業場としてとらえることにより労働安全衛生法がより適切に運用できる場合には、その部門は別個の事業場としてとらえることとしています。この例としては、工場の診療所などがあげられます。なお、事業場の業種の区分については、「その業態によって個別に決するもの」とされており、事業場ごとに業種を判断することになります。例えば、製鉄所は「製造業」とされますが、その経営や人事の管理をもっぱらおこなっている本社は「その他の事業」ということになります。
A.安衛法上の労働者は、労基法の労働者と同一の概念です。 また、同居の親族のみを使用する事業場には、労基法と同様、安衛法も適用されません。(クレーンの運転等の資格関係を除きます)
ただし、他人を1人でも使用すれば適用になりますし、適用がない場合でも、職場の安全衛生に関わることですから、安衛法が規定する事項について十分留意することが大切でしょう。
A.衛生管理者をおく義務があるのは、企業単位ではなく、事業場単位で見て常時50人以上の労働者がいる職場です。 ご質問の場合は、会社全体で50人を超えていますが、各店舗では、50人に満たないため、労働安全衛生法上、衛生管理者を選任する義務はありません。
A.その事業場で事業の実施を統括管理する者などの中から一人を事業者が指名し、その者が議長となります。 その他に、安全管理者、衛生管理者、産業医、安全に関し経験を有する労働者、衛生に関し経験を有する労働者のうちから、それぞれ、委員として事業者が指名しなければならないこととなっています。
また、議長となる委員以外の委員の半数は、労働者の過半数で組織する労働組合(それがない場合には、労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づき指名しなければならないこととなっています。
A.労働安全衛生法上、特に人数の定めはありません。上記のA4の要件を満たしていれば、事業場の規模、作業の実態に応じて独自に決めて差し支えありません。
A.安全衛生教育は業務の一環として実施するものですから、原則として、所定労働時間内に行うようにしてください。
A.一般の定期健康診断については、特に所定労働時間内に実施する義務はありません。もっとも、できるだけ労働者の便宜をはかり、所定労働時間内に行うほうが望ましいです。
なお、特殊健康診断については、所定労働時間内に行わなければならず、時間外などに実施すれば、その時間について割増賃金を支払う必要があります。
A.労働者には健康診断を受診する義務がありますから(安衛法66条5項)、原則として労働者は事業者の実施する健康診断を拒むことはできません。 ただし、労働者が他の医師による健康診断を受け、その結果を証明する書面を提示すれば、重ねて行う必要はありません。
健康の確保の大切さ、そのための健康診断の重要性などについて日頃から労働者に説明しておくことが大切です。
A.健康管理については、医学的な専門知識なども必要となりますから、登録産業医のいる地域産業保健センターを活用することをお勧めします。
A.時間外・休日労働の把握について、会社と労働者とで食い違いがあり、確定させるのに時間がかかる場合においては、健康確保の観点から、まずは面接指導を実施することが望ましいです。
A.原則として、労働者は、事業者の行う面接指導を受ける義務があります。 ただし、労働者が事業者の指定した医師による面接指導を希望しない場合は、他の医師による面接指導を受け、その結果を証明する書面を提出してもらうことも可能です。
その際、心身の状況などの個人情報の取扱に注意してください。
A.例えば、次のような措置が考えられます。 (1)労働者に対して保健師などによる保健指導を行う。 (2)チェックリストを用いて疲労蓄積度を把握し、必要な者には面接指導を行う。
(3)事業場の健康管理について、事業者が産業医等から助言指導を受ける。
A.報告するときは、災害発生の状況についてできるだけ詳しく書いてください。ポイントは次のような点です。 (1)どのような場所で (3)どのようなものあるいは環境によって
(4)どのような不安全または有害な状態があって (5)どのように災害が発生したのか
A.労災保険の休業補償給付が受けられるのは、休業開始後4日目からです。 本来業務上の災害については、事業主に補償責任がありますが(労基法75条〜88条)、労災保険は事業主に代わって補償を行うものです。
したがって、労災保険で補償されない休業直後の3日間については、労基法に基づき事業主が補償を行わなければなりません。
A.派遣労働者が被災した場合は、派遣元と派遣先双方の事業者が、労働者死傷病報告をそれぞれ所轄の監督署に提出する必要があります。 なお、派遣先の事業者は、労働者死傷病報告書を出したときは、その写しを派遣元の事業者に送付しなければなりません。
A. パート労働者等の短時間労働者が「常時使用する労働者」に該当するか否かについては、平成19年10月1日基発第1001016号通達で示されています。その中で、一般健康診断を実施すべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の(1)と(2)のいずれの要件をも満たす場合としています。
(1)期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。(なお、特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる者の雇入時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者) (2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。
上記(1)と(2)のどちらも満たす場合、常時使用する労働者となりますが、上記の(2)に該当しない場合であっても、上記の(1)に該当し、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施するのが望ましいとされています。なお、労働者派遣事業法に基づく派遣労働者についての一般健康診断は、労働者の派遣元の事業場で実施し、有害業務従事労働者についての健康診断は派遣先の事業場で実施することとなります。
A.「労働衛生3管理」とは、職場の労働衛生管理を進めるには、『作業環境管理』『作業管理』『健康管理』の3管理の面から検討し、職場の改善並びにその防止対策を図り、作業者の健康を保持増進することです。
次に3管理の内容について説明をします。『作業環境管理』とは、作業環境中のガス・粉じん等の有害要因を取り除いて適正な作業環境を確保すること。特に、有害物を取り扱う作業場では、一定の技術基準による的確な作業環境測定を実施し、その測定結果に基づいて必要な改善措置を実施することが必要です。
また、作業環境測定の結果を適切に評価し、その評価結果を作業者の健康保持のための設備の改善や適切な整備に応用することです。この管理は、衛生管理者、安全衛生推進者(衛生推進者)、作業環境測定士等が中心となって適切に推進することが大切です。
『作業管理』とは、作業に伴う有害なエネルギーや物質、作業による身体的負荷等の作業者に及ぼす影響などの有害要因を除去することです。それには有害物のばく露の防止を図るための作業手順・方法を定め、保護具の適正な使用、作業負荷の軽減、作業姿勢の適正化などについて個々の人の健康状態、さらには、作業のやり方によって異なる要因を適切に管理して作業者への影響を少なくすることです。この管理は主として、作業主任者、作業責任者、職長等現場の責任者により適切に行われることが大切です。
『健康管理』とは、健康診断を通じて労働者の健康状況を把握し、その結果に基づく適切な事後措置、保健指導を実施し、環境測定により作業方法や作業環境との関連を検討して、労働者の健康障害を未然に防ぐことです。また、健康診断の結果に基づく事後措置、健康測定結果に基づく健康指導を含めた生活全般にわたる幅広い内容をも含みます。この管理は、産業医、産業保健指導担当者、心理相談担当者、健康診断機関等が中心となって適切に行われることが大切です。
A.労働者に健康障害を及ぼすおそれのある化学物質を譲渡・提供する者(メーカ−など)は、その化学物質に係る有害性等の情報を、文書で提供先に通知することが義務付けられています。また、これらの化学物質等を使用する事業者は、有害性等の情報を当該物質を取り扱う労働者に周知させなければなりません。
この有害性等の情報を通知するための文書がMSDS(Materiar Safety Data Sheet:化学物質等安全データシート)であり、名称、成分及びその含有量、物理的化学的性質、危険有害性の種類、危険有害性の内容及び程度、貯蔵または取り扱い上の注意、事故時等における応急措置などについての情報を記載した資料のことをいいます。化学物質等を取り扱う事業場では、化学物質管理者等がMSDSを活用して、リスクアセスメントを実施し、化学物質の危険有害性、実際の取扱い方法、取扱い量、労働者のばく露経路や推定されるばく露程度等を総合的に考慮し、労働者の健康障害の可能性及びその程度を評価するとともに、その結果に基づく必要な措置を講じることが重要です。
労働安全衛生法では、MSDSによって情報を通知する対象として計638の化学物質が定められています。なお、MSDS制度は、ILO(国際労働機関)などの国際機関が普及と活用に取り組んでおり、わが国でも労働安全衛生法のほか、劇物及び毒物取締法、RTR法によって交付が義務付けられています。